2013年12月27日金曜日

京大アカデミックデイで展示発表

2013年12月21日京大吉田キャンパスで開催されたアカデミックデイでポスター展示と環境発電のデモ展示をしました。この企画は京大で実施している最先端の研究活動を一般市民にも知ってもらおうというものです。延べ529名が参加したとの報告がありました。製造会社から上がってきたばかりのプロセッサチップを太陽電池と振動発電デバイスで動作させるデモを見せようとしていましたが結局この日の展示には準備が間に合いませんでした。肝心な時に動いてくれません。プロセッサが環境発電動作するデモは見せられませんでしたがプロセッサチップが普通に低消費電力動作するデモを見せました。高校生や子供たちには喜んでもらえたようです。展示に使ったポスターは研究活動報告のページにアップします。

2013年12月19日木曜日

チップ上でRTOSがサクサク動作

本プロジェクトで試作したプロセッサチップ上でRTOSが正しく動作することを確認しました。同じ情報学研究科の高瀬先生に協力してもらいToppersに動的電力管理機構(DEPS機構)を追加しました。高瀬さんありがとうございます。このチップは動的に動作電圧を変更するDVFSと呼ばれる機構をデジタル化した機能を搭載していて、アナログ的な動作なしにCPUコアの動作電圧を変更するのでソフトウェアから遅延予測しやすい電圧変更が可能です。非常にきめ細かくRTOSが電圧を切り替えながら動作する様子は感動ものです。消費電力が35mWで200MHzの動作から5MHzで300μWまでの幅広い範囲で動作します。300μW動作になると10cm角程度の太陽電池が屋内の暗い照明で発電する電力でも十分に動作します。

2013年11月7日木曜日

電子情報通信学会 受賞者の声

電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Reviewに論文賞受賞者の声が掲載されました。賞に恥じないよう精進します。

2013年9月25日水曜日

FLAでの研究成果2件が特許登録

Fujitsu Labs of America (FLA)に勤めていた際に申請した特許2件が登録査定を受けて特許権を取得していることに気付きました。登録査定を受けたのは下記の2件です。

特許公開2007-048285キャッシュにおける電力消費削減方法、論理装置及びシステム
特許公開2007-249974:プロセッサ設計を特徴付けるための方法、装置、論理プログラム及びシステム

ご存知のとおり、特許は出願だけならある意味誰でも出来ますが、特許登録となると非常に長い期間とそれなりの費用がかかります。多くの場合、審査の過程で拒絶査定を受けたり、申請側が途中で取り下げる「取り下げ」によって特許登録までたどり着きません。これまで私は8件ほどの特許出願を行いましたが、(日本では)特許登録までたどり着いたのは今回が初めてです。協力してくださった富士通研究所の方々には感謝の気持ちでいっぱいです。

一つ目の特許は、キャッシュセットごとに異なる連想度(ウェイ数)を持つことを許すキャッシュ構造とそのキャッシュを対象としたコードレイアウト手法に関するものです。プログラム中には高い連想度が必要な箇所と低い連想度で十分な箇所があります。高い連想度が必要なコードがウェイ数の多いセットに、他はウェイ数が少ないセットに配置されるようにプログラムコードのレイアウトを最適化します。これによってプログラムアクセスに必要な消費電力を大幅に削減できます。

二つ目の特許は、プロセッサの消費電力をキャラクタライズする手法に関するものです。対象とするプロセッサが与えられた時に、そのプロセッサの消費電力を特徴づけるテストベンチを半自動で生成し、プロセッサへ入力されるプログラムコードに応じた消費電力値を計算するモデル式を生成します。これにより、プログラムのどこでどれだけエネルギーを消費するのかを高速に解析できます。

これら2つの成果は今のプロジェクトの中でも発展した形で生きています。

Loop Cacheに関する成果がACM TECSに掲載

昨年7月までプロジェクトで活躍してくれたGuさんを中心にまとめた研究成果がACM Transactions on Embedded Computing Systemsに掲載されました。

Ji Gu, Hui Guo, Tohru Ishihara, "DLIC: Decoded loop instructions caching for energy-aware embedded processors," ACM Transactions on Embedded Computing Systems, vol 13, no 1, Article 6, August 2013.

この成果は、プログラムメモリへのアクセスに伴うエネルギーを削減するもので、Level-1キャッシュよりもCPUに近い階層に小形で低電力なキャッシュ(Loop Cache)を追加することにより プログラムアクセスに必要なエネルギーを60%以上削減することを可能にしました。Guさんにはもう少し永くこのプロジェクトに残ってもらいたかったのですが、グローバル化が実質的に進んでいない日本では優秀な外国人研究者を永く引き止めることは非常に難しいです。日本では日本語を流暢に話せなければ快適な日常生活をおくることが出来ません。

2013年9月12日木曜日

SNU-ESRC and Samsung-SATTI Joint Workshopで成果発表

9月9日、10日に韓国ソウル大学で開催されたSNU-ESRC and Samsung-SATTI Joint Workshopに参加し、「Dynamic Power Management for Harvested Energy-based Embedded Systems」というタイトルでプロジェクトの成果を発表しました。このワークショップはソウル大学とサムソン電子の技術トレーニング研究所との共同企画のワークショップでした。SATTIはSamsung Advanced Technology Training Instituteの略です。ソウル大学のサムソン電子の強力な産学連携を目の当たりにして非常に羨ましく思いました。日本では学生の工学離れが言われて久しいですが、韓国ではサムソンという憧れの企業があることで工学人気が維持されているようです。講演に使用したスライドは活動報告のページにアップします。


アジア情報学セミナー@ソウルで活動紹介

9月9日に韓国ソウルで開催されたアジア情報学セミナーに参加し「Challenges for Harvested Energy-based Computing」というタイトルでプロジェクトの成果を発表しました。このセミナーは情報学研究科が企画したセミナーで、アジアの大学との研究交流と(将来的には)人材交流を目的としたものです。情報学全般ですので内容が幅広く、ソウル大学からワイアレスセンサネットワークの発表をしたJaeha Kimさんの発表以外はほとんど内容に着いていけませんでした。彼は若手ですがスタンフォード大学で学位を取った将来有望な研究者で、英語も発表の仕方も抜群に上手でした。やはり英語も大事だし、思っていることをわかりやすく伝えることも大事だと改めて痛感しました。講演に使用したスライドは活動報告のページに公開します。

2013年9月6日金曜日

ISLPED2013@北京に参加

9月4日~6日の3日間、北京で開催されたISLPED2013(International Symposium on Low Power Electronics and Design 2013)に参加してきました。8月頭にTPCチェアのYuan Xieから「座長をしてくれ」と頼まれ、急遽参加することにしました。驚いたことに日本からの参加者は石原一人だけでした。ここ数年、EDA関連の会議への日本人の参加者が急激に減っていて心配です。一方、中国は勢いを感じます。まだエレクトロニクスが成長を続けているのだと思われます。北京大学や清華大学の学生が多数参加して熱心に聴講していました。韓国や台湾からの参加者もそれぞれ10名以上ずつはいたと思います。今年は、エナージーハーベスティングやデータセンタなどに関連する発表が多いように感じました。数年前から純粋なLSIの低消費電力化に関する発表はほとんど無く、LSI単体の低消費電力化はもうネタがあまり残っていないようです。

ところで、北京はいつもスモッグがかかっていて曇っているらしい(と北京大学の人が言っていました)のですが、ISLPEDの開催期間中に凄まじい雷雨が降り、その次の日は滅多に見ない快晴になりました。下の写真は北京大学構内のある建物ですが、注目すべきは青空です。ピンボケしていますが。

2013年8月28日水曜日

情報処理学会SLDM研究会優秀論文賞ほか多数受賞

昨年の8月に開催されたDAシンポジウム2012で発表したメンバーが優秀論文賞ほか多数の賞を受賞しました。授賞式は今年のDAシンポジウム2013で行われました。西澤君が情報処理学会コンピュータサイエンス領域奨励賞、マーフズ君と石原がそれぞれ情報処理学会SLDM研究会優秀論文賞、さらにSLDM研究会優秀発表学生賞を3件受賞しました。優秀発表学生賞は約60件の学生の発表から22件が選ばれますので受賞確率は高いですが、コンピュータサイエンス領域奨励賞は同じく約60件の対象者(発表者が29歳以下)から2件ですので狭き門です。SLDM研究会優秀論文賞は年齢制限がなく全発表者から4件を選びます。この賞に恥じないよう精進します。


DAシンポジウム2013で3件発表

8月21日-22日の二日間、岐阜県下呂温泉でDAシンポジウムが開催され、研究室から5件の発表がありました。そのうち3件はEGSプロジェクトに関する発表でした。2件は基本セルのチューニング法に関する発表で、もう一つはプロセッサのチューニング法に関する発表でした。今年は正直、かなり準備不足の論文ばかりでしたので心配していましたが何とか乗り切ることが出来ました。しかし、何とか乗り切ったという感じで、全く納得できる内容ではありません。そもそも発表できる内容をしっかり準備する必要がありますが、今年はそれができていませんでした。発表内容が整えば、次は内容が正確に伝わるように発表の準備をするということになりますが、これも不十分でした。来年度以降はしっかり準備したいと思います。

2013年7月30日火曜日

MPSoC2013でエナジーハーベスティング技術の研究成果を発表

7月15日~7月19日の5日間、琵琶湖ホテルで開催されたMPSoC2013 にて研究成果の発表を行いました。この会議には5年間連続で参加していますが、非常にユニークで緊張感のある会議です。講演者は招待講演のみで、中堅以上の研究者(大学の准教授クラス以上)です。しかも、すべての会議参加者に配られる評価シートによって講演内容が評価されるというフォーマットが緊張感の原因です。今年は、李さんを中心に研究しているエナジーハーベスティング技術の講演をしました。もはやMPSoCでも何でもありません。反応もイマイチだったような気もします。来年はもう少しMPSoCに関連した発表をしようと思います。発表に使ったスライドはEGSプロジェクトの 活動紹介のページ にアップします。来年はフランスのボルドーです。必ず参加します!

2013年6月26日水曜日

DAC U-Boothで発表

研究員のLeeさんが、6月2日~6日の間に米国のテキサス州Austinで開催されたDACに参加し、University Boothで環境発電システムのデモンストレーションを行いました。石原も参加の予定でしたが学内の予定との調整が出来ず(それとオースチンが意外と遠かったのもあり)、今回は参加できませんでした。デモンストレーションは本プロジェクトで試作したプロセッサを太陽電池のエネルギーだけで動作させるというものです。ここでは2011年度に試作した古いチップのデモンストレーションしかできませんでした。今年の3月に新しいチップが納品されていたのでDACでお披露目出来るように準備していましたがソケットのサイズが微妙に合わないとかボードにバグがあったりで間に合いませんでした。しかし、新チップは期待通り(設計通り)電力効率が良いです。室内光で10cm角程度の太陽電池が発電する電力(数十mW)でもサクサク動きます。次の機会にはお披露目したいです。DACのデモンストレーションで使った資料は活動報告のページにアップしました。

2013年5月26日日曜日

論文賞授賞式に参加

5月25日、機械振興会館で開催された電子情報通信学会の論文賞受賞式に参加してきました。予想通り、会長の吉田進先生より授与され、とても嬉しかったです。吉田先生はこの日(5/25)までが会長で、次期会長は井上友二さん(九大卒の大先輩)です。授賞式には安浦先生も来られていて、受賞を喜んでいただけました。これを機にもっと大きなことがしたいです。

2013年5月24日金曜日

SACSIS2013でチュートリアル講演

5月22日~24日の三日間、仙台国際センターで開催されたSACSISという会議に参加し、最終日にチュートリアル講演(コンピュータシステムのためのエナジーハーベスティング技術)をしました。HP(ハイパフォーマンスコンピューティング)分野の研究会に参加するのは初めてで、エナジーハーベスティングの話をしても興味を持ってくれる人がいるか心配でしたが、少しは興味を持ってくれる人がいたようで安心しました。しかし、壇上から聴衆の表情を見ていると大半は「ポカーン」といった感じだったように思えました。何はともあれとても良い経験になったので、呼んでくれたこうじさん、質問してくれた中村先生ありがとうございました。講演のスライドは活動報告のページにアップしました。

2013年4月18日木曜日

電子情報通信学会の論文賞を受賞

昨年度末に九大のロビックさんと一緒に執筆し、電子情報通信学会から出版された論文が、平成24年度の論文賞を受賞することが決定したそうです。受賞対象となった論文は、Lovic GAUTHIER,Tohru ISHIHARA, "Implementation of Stack Data Placement and Run Time Management Using a Scratch-Pad Memory for Energy Consumption Reduction of Embedded Applications"です。スクラッチパッドメモリを利用したプロセッサの省エネルギー化は長く続けて来た研究ですが、その成果の一つが権威ある賞を受賞することになり光栄です。授賞式は5月末に機械振興会館で行われるそうです。恐らく、尊敬する吉田進先生より授与されることになりそうなのでワクワクします。

2013年3月31日日曜日

Bristol大学(イギリス)のワークショップに参加

3月26日と27日の二日間で、Bristol大学で開催されたEnergy-Aware COmputing (EACO) workshopに参加し、講演をして来ました。ところで、ARMが最近しきりに宣伝しているbig.littleアーキテクチャというのを知っていますか? ARMが開発した高性能CPUコアと省エネCPUコアの2種類をプロセッサ内に搭載し、それを計算負荷に合わせて切り換えて使うというアーキテクチャ(コンセプト)です。私は以前からこのコンセプトが我々がずいぶん前から提唱している「Multi-Performance Processor」のコンセプトに似ていると言ってきましたが、今回(ARM本社がある)本場イギリスでの講演の中で始めて、このことを恐る恐る言ってみました。そうすると「君の言うとおりだ」と結構好評でした。「Multi-Performance Processor」の本質は、2つのエネルギー効率の異なるCPUコアを「排他的」に動作させること。2つ(以上)のコアを同時に動作させるとそれは単なるヘテロジニアスマルチコアですが、「排他的」に動作させることによって高い平均エネルギー効率と高いピーク性能を同時に達成できるというのが「ミソ」です。この「ミソ」は正にbig.littleアーキテクチャの「ミソ」とも重なっていて、今更ながら提案したときにもっと積極的に宣伝しておけば良かったと思いました。当時は、「複数のコアを同時に動かした方が効率が良いに決まっている」と言われたものですが、ARMがbig.littleアーキテクチャを言い始めると世の中はすっかりbig.littleが良いという雰囲気に変わっています。何はともあれ、ARMの本場でいろいろな研究者と技術交流ができ、有意義なワークショップでした。
「Multi-Performance Processor」以外に、プロセッサのエネルギーをキャラクタライズする研究成果やスクラッチパッドメモリを使った省エネ技術を紹介しどれも好評でした。特にNew Castle Universityの研究者たちが強い興味を示してくれました。同じようなことをやっているようでした。

DATE conference に参加

3月18日~22日にかけてフランスのグルノーブルで開催されたDATE conferenceと共同開催のワークショップに参加してきました。研究員のLeeさん、博士課程のマーフズ君、釡江君と共に参加しました。LeeさんはUniversity Boothとワークショップでポスター発表をし、マーフズ君と釡江君はUniversity Boothで試作チップのデモとポスター発表をしました。多数の訪問者があり、活発な議論ができました。特に今回のDATEはコンピュータの省エネ化にフォーカスしていたので、我々にとっては勉強になりましたし良い宣伝にもなりました。コンピュータ分野の最近流行りのキーワードは「Internat of Things(IoT)」で、今回のDATEでも至るところでIoTの話題が議論されていました。
ところで今回はFujitsu Labs of America で一緒に研究していたDr. Rajive Murgaiに10年ぶりに再会しました。FLAでの研究生活を思い出して感慨深い気持ちになりました。改めて思うことですが、FLAでの2年半の経験が一番自分を成長させてくれた経験になっていると感じます。若い人たちには是非若いうちに海外での経験を積んで欲しいと思います。

2013年3月13日水曜日

ソウル大学訪問

3月11日と12日の二日間、ソウル大学を訪問しました。今回は小野寺先生や学生と共に訪問し、ワークショップも企画しました。各自10分間での短い講演をしてもらいディスカッションするという内容でした。予想以上に充実したワークショップになりました。ソウル大学側ではNaehyuck Chang教授とKiyoung Choi教授およびその学生たちが手厚いもてなしをしてくれました。毎回思うことですがソウル大学の学生たちは英語での講演が上手です。英語もそうですが内容が上手く練られたスライド構成になっています。見習わないといけません。何を知ってもらいたいか、何を知ってもらうと研究の良さが伝わるかを考える能力は重要です。私もまた動機付けられましたし、学生たちもやる気を出してくれることを願います。最終日に昼食を皆でとった後に、集合写真を撮ることになり、通りかかったおじさんに撮影をお願いしたのですが見事な写真でした。それもそのはず、たまたまですが、元カメラマンだったそうです。

2013年3月8日金曜日

システムLSIについて

今日は、私のプロジェクトの研究対象の一部である「システムLSI」について書きたいと思います。過去数年の新聞や雑誌の記事を見ていると、システムLSIが半導体業界の不振の原因だというように言われていますが、それは全く違います。優秀な若者が集積回路設計分野を敬遠する結果になることが心配です。世界には、システムLSIで大儲けしている会社がたくさんあります。例えば、QualcommのSnapdragonやTIのOMAPなどが良い例です。IntelのプロセッサだってシステムLSIの一種です。問題の元凶は、システムLSIではなく「標準品」を作ってこなかった「戦略」にあると私は思います。集積回路は元々写真と同じで、同じ設計を大量に焼き増しして売るから儲かるのであって、一つの設計から少数だけを売ってもあまり儲かるものではありません。もちろん、少量生産でも高い付加価値を付ければそれなりに儲かりますが(それが日本の戦略の一つだと思いますが)、日本のチップベンダはこぞって少量生産の「特注品システムLSI」戦略を採ったために、「システムLSIが儲からない。。。」となってしまったのだと思います。それではなぜ日本のチップベンダは、ベンダ側が主導する「標準品」を作ってこなかったのでしょうか?集積回路に限らず、日本は伝統的に「標準化」があまり得意ではありません。これは教育に大きな原因があるのではないかと私は思います。ある問題とその答えが提示されるとその問題が効率良く解けるように解法を改良することは得意ですが、そもそも新しい問題を探したり、問題の本質を具体化したり、答えの無い問題を解くのが苦手な(あるいはそもそもそういう発想がない)人が多いのでは無いでしょうか? 顧客から具体的に「こういうLSIをこういうスペックで作って欲しい」と言われるとそれを安く作るのは得意ではないでしょうか? 一方で、新しいアーキテクチャを自ら提案して「こういうソリューションが良いんだ!」と説得できる日本人は多くないように思います。欧米、とくにアメリカでは、人と違うことをやる能力や創造力(creativeと言っていました)を徹底的に鍛える教育が行われているそうです。私が北米で仕事をしていたときに、インド人研究者(北米の大学でPh.Dを取得した研究者)たちが口を揃えて北米の高等教育を褒めていました。日本も根本的なところで手を打たないと、この問題はすべての分野に広がっていくのではないかと心配します。

2013年2月21日木曜日

プロジェクトの成功と学生研究の成功の両立

久しぶりの更新ですが、気が付けばこの最先端・次世代プロジェクトが始まってから2年が経ちました。残すところ1年と1ヶ月少々となりましたが、今日はプロジェクトの最終年度へ向けて思うことを少し書こうと思います。今更ながら改めて思うことですが、プロジェクトリーダが目指すところと、そのプロジェクトに関係する学生が目指すことは必ずしも一致していません。というより、学生はプロジェクトの成功には基本的に興味がありませんし、学生に対して「プロジェクトの成功に興味を持て!」というのは少しお門違いなことだと思います。大学に身を置き、プロジェクトを率いる研究者の端くれとしてこの点を再認識する必要があると感じます。学生は博士課程の学生であってもまだまだ駆け出しの研究者ですので、大型のプロジェクトの成功に直接影響を与えるような成果はなかなか出せません。修士課程の学生や学部の学生なら言わずもがなです。この状況はポスドクの研究員であっても大差ありません。しかし学生たちは、大学生活の中で〝研究を成功させるための考え方´´ を身に付け、将来非常に難しい問題を解決する可能性を持った金の卵です。そんな金の卵たちの成長を、あるプロジェクトの成功のために遅らせてしまうのはあってはいけないと思います。こういうことを言うとすぐに〝研究がうまくいっていない言い訳だ!´´ と言われるわけですが(私も数年前まではそう思っていたのですが)、今は率直に、プロジェクトに関係する研究員や学生たちがなるべく楽しく研究をし、楽しく論文を書き、研究の真の楽しさを実感できる環境づくりをしていきたいと思います。一番良いのは、プロジェクトの成功と関係者全員の研究の成功がシンクロすることですので、最終年度は、そのことを目指して頑張ろうと思います。