2013年3月8日金曜日

システムLSIについて

今日は、私のプロジェクトの研究対象の一部である「システムLSI」について書きたいと思います。過去数年の新聞や雑誌の記事を見ていると、システムLSIが半導体業界の不振の原因だというように言われていますが、それは全く違います。優秀な若者が集積回路設計分野を敬遠する結果になることが心配です。世界には、システムLSIで大儲けしている会社がたくさんあります。例えば、QualcommのSnapdragonやTIのOMAPなどが良い例です。IntelのプロセッサだってシステムLSIの一種です。問題の元凶は、システムLSIではなく「標準品」を作ってこなかった「戦略」にあると私は思います。集積回路は元々写真と同じで、同じ設計を大量に焼き増しして売るから儲かるのであって、一つの設計から少数だけを売ってもあまり儲かるものではありません。もちろん、少量生産でも高い付加価値を付ければそれなりに儲かりますが(それが日本の戦略の一つだと思いますが)、日本のチップベンダはこぞって少量生産の「特注品システムLSI」戦略を採ったために、「システムLSIが儲からない。。。」となってしまったのだと思います。それではなぜ日本のチップベンダは、ベンダ側が主導する「標準品」を作ってこなかったのでしょうか?集積回路に限らず、日本は伝統的に「標準化」があまり得意ではありません。これは教育に大きな原因があるのではないかと私は思います。ある問題とその答えが提示されるとその問題が効率良く解けるように解法を改良することは得意ですが、そもそも新しい問題を探したり、問題の本質を具体化したり、答えの無い問題を解くのが苦手な(あるいはそもそもそういう発想がない)人が多いのでは無いでしょうか? 顧客から具体的に「こういうLSIをこういうスペックで作って欲しい」と言われるとそれを安く作るのは得意ではないでしょうか? 一方で、新しいアーキテクチャを自ら提案して「こういうソリューションが良いんだ!」と説得できる日本人は多くないように思います。欧米、とくにアメリカでは、人と違うことをやる能力や創造力(creativeと言っていました)を徹底的に鍛える教育が行われているそうです。私が北米で仕事をしていたときに、インド人研究者(北米の大学でPh.Dを取得した研究者)たちが口を揃えて北米の高等教育を褒めていました。日本も根本的なところで手を打たないと、この問題はすべての分野に広がっていくのではないかと心配します。

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