2013年9月25日水曜日

FLAでの研究成果2件が特許登録

Fujitsu Labs of America (FLA)に勤めていた際に申請した特許2件が登録査定を受けて特許権を取得していることに気付きました。登録査定を受けたのは下記の2件です。

特許公開2007-048285キャッシュにおける電力消費削減方法、論理装置及びシステム
特許公開2007-249974:プロセッサ設計を特徴付けるための方法、装置、論理プログラム及びシステム

ご存知のとおり、特許は出願だけならある意味誰でも出来ますが、特許登録となると非常に長い期間とそれなりの費用がかかります。多くの場合、審査の過程で拒絶査定を受けたり、申請側が途中で取り下げる「取り下げ」によって特許登録までたどり着きません。これまで私は8件ほどの特許出願を行いましたが、(日本では)特許登録までたどり着いたのは今回が初めてです。協力してくださった富士通研究所の方々には感謝の気持ちでいっぱいです。

一つ目の特許は、キャッシュセットごとに異なる連想度(ウェイ数)を持つことを許すキャッシュ構造とそのキャッシュを対象としたコードレイアウト手法に関するものです。プログラム中には高い連想度が必要な箇所と低い連想度で十分な箇所があります。高い連想度が必要なコードがウェイ数の多いセットに、他はウェイ数が少ないセットに配置されるようにプログラムコードのレイアウトを最適化します。これによってプログラムアクセスに必要な消費電力を大幅に削減できます。

二つ目の特許は、プロセッサの消費電力をキャラクタライズする手法に関するものです。対象とするプロセッサが与えられた時に、そのプロセッサの消費電力を特徴づけるテストベンチを半自動で生成し、プロセッサへ入力されるプログラムコードに応じた消費電力値を計算するモデル式を生成します。これにより、プログラムのどこでどれだけエネルギーを消費するのかを高速に解析できます。

これら2つの成果は今のプロジェクトの中でも発展した形で生きています。

Loop Cacheに関する成果がACM TECSに掲載

昨年7月までプロジェクトで活躍してくれたGuさんを中心にまとめた研究成果がACM Transactions on Embedded Computing Systemsに掲載されました。

Ji Gu, Hui Guo, Tohru Ishihara, "DLIC: Decoded loop instructions caching for energy-aware embedded processors," ACM Transactions on Embedded Computing Systems, vol 13, no 1, Article 6, August 2013.

この成果は、プログラムメモリへのアクセスに伴うエネルギーを削減するもので、Level-1キャッシュよりもCPUに近い階層に小形で低電力なキャッシュ(Loop Cache)を追加することにより プログラムアクセスに必要なエネルギーを60%以上削減することを可能にしました。Guさんにはもう少し永くこのプロジェクトに残ってもらいたかったのですが、グローバル化が実質的に進んでいない日本では優秀な外国人研究者を永く引き止めることは非常に難しいです。日本では日本語を流暢に話せなければ快適な日常生活をおくることが出来ません。

2013年9月12日木曜日

SNU-ESRC and Samsung-SATTI Joint Workshopで成果発表

9月9日、10日に韓国ソウル大学で開催されたSNU-ESRC and Samsung-SATTI Joint Workshopに参加し、「Dynamic Power Management for Harvested Energy-based Embedded Systems」というタイトルでプロジェクトの成果を発表しました。このワークショップはソウル大学とサムソン電子の技術トレーニング研究所との共同企画のワークショップでした。SATTIはSamsung Advanced Technology Training Instituteの略です。ソウル大学のサムソン電子の強力な産学連携を目の当たりにして非常に羨ましく思いました。日本では学生の工学離れが言われて久しいですが、韓国ではサムソンという憧れの企業があることで工学人気が維持されているようです。講演に使用したスライドは活動報告のページにアップします。


アジア情報学セミナー@ソウルで活動紹介

9月9日に韓国ソウルで開催されたアジア情報学セミナーに参加し「Challenges for Harvested Energy-based Computing」というタイトルでプロジェクトの成果を発表しました。このセミナーは情報学研究科が企画したセミナーで、アジアの大学との研究交流と(将来的には)人材交流を目的としたものです。情報学全般ですので内容が幅広く、ソウル大学からワイアレスセンサネットワークの発表をしたJaeha Kimさんの発表以外はほとんど内容に着いていけませんでした。彼は若手ですがスタンフォード大学で学位を取った将来有望な研究者で、英語も発表の仕方も抜群に上手でした。やはり英語も大事だし、思っていることをわかりやすく伝えることも大事だと改めて痛感しました。講演に使用したスライドは活動報告のページに公開します。

2013年9月6日金曜日

ISLPED2013@北京に参加

9月4日~6日の3日間、北京で開催されたISLPED2013(International Symposium on Low Power Electronics and Design 2013)に参加してきました。8月頭にTPCチェアのYuan Xieから「座長をしてくれ」と頼まれ、急遽参加することにしました。驚いたことに日本からの参加者は石原一人だけでした。ここ数年、EDA関連の会議への日本人の参加者が急激に減っていて心配です。一方、中国は勢いを感じます。まだエレクトロニクスが成長を続けているのだと思われます。北京大学や清華大学の学生が多数参加して熱心に聴講していました。韓国や台湾からの参加者もそれぞれ10名以上ずつはいたと思います。今年は、エナージーハーベスティングやデータセンタなどに関連する発表が多いように感じました。数年前から純粋なLSIの低消費電力化に関する発表はほとんど無く、LSI単体の低消費電力化はもうネタがあまり残っていないようです。

ところで、北京はいつもスモッグがかかっていて曇っているらしい(と北京大学の人が言っていました)のですが、ISLPEDの開催期間中に凄まじい雷雨が降り、その次の日は滅多に見ない快晴になりました。下の写真は北京大学構内のある建物ですが、注目すべきは青空です。ピンボケしていますが。